○根深汁丸くなった吾独り
(ねぶかじるまあるくなったわれひとり)
○一鍋の朝昼晩に根深汁 秋甫
○根深汁青洟の子の座りゐる 々
○忘却の淵掻きまわす根深汁 々
幼い頃、母の実家の田舎で祖父母と一緒に暮らしていたので、囲炉裏の思い出は数々ある。働き者だった祖父母は朝は囲炉裏に火を点けなかったが、竈にかけた大鍋に味噌汁を一杯炊いた。夕餉には祖父母と叔父で囲炉裏の火を囲む。叔父の食事の姿は好きであった、漬物を噛む音が特に快く聞こえた、楽しかったのか、悲しかったのか、囲炉裏の火に照らされて赤らんだ頬だけが思い出される。