熱帯夜

     ○熱帯夜蒲団被って怪奇譚
(ねったいやふとんかぶってかいきたん)

       ○死神に足掴まれし熱帯夜           秋甫
       ○熱帯夜天井裏に大目玉            々
       ○熱帯夜魑魅魍魎(ちみもうりょう)が胸の上  々
 連日30度を越す寝苦しい熱帯夜が続いている。
 子供の頃、江戸川乱歩の怪奇ものを好んで読んだのを思い出す。夕刻など床几に座っていると下から足を引っ張られる光景を想像して思わず上へあがったりしたものだった。
 暑い夜は家の前が団扇を持った家人たちでにぎわっていた。子供たちは所々にできた夕涼みの溜まりに面白い話はないかわたり歩いた。興じると何度も「早く寝ろ」と怒られるほど、夜遅くまでキャーキャー叫んでいつまでもお開きにならないことを願った。
 子供たちはどの家にもあふれるほど居て、夜遊びと言っても、親から常に目の届く範疇にいたし、隣近所の大人たちも誰かは必ずいたものだ。