草いきれ

     ○間歩出でて人の恋しき草いきれ
(まぶいでてひとのこいしきくさいきれ)
筏津坑
 数年前までは、筏津山荘という民宿が営業されていて、敷地内の池ではアユの養殖も行なわれ、あゆ料理や秋にはマッタケ料理などををわざわざ食べに来る人もあったのですが、山荘は更地になっていて、池までも埋められていました。そのために、裏手にあった坑道の入り口が、山の斜面へ現になって、坑道内へは進入出来ないように鉄の柵で囲っていました。
 市の史跡として管理されているのでしょう、草を刈る人がいて、その音が谷へ木霊していました。その草いきれは遠く懐かしい子供の頃の郷愁に誘われました。
 筏津より少し上に山の水を汲める場所があるのです。このところの晴天つづきで、水量はそれほど多くはありませんでしたが、汲むには十分な水が流れていました。家から用意していた大きなペットボトルに一杯汲んで持って帰ることにしました。地域の人の身びいきかここの水は石鎚の伏流水より質がいいと言っていたのを思い出します。