秋の声

     ○賢治の童話繙けば秋の声
(けんじのどうわひもとけばあきのこえ)

       ○樫の木はぽとりころころ秋の声  秋甫
       ○佇めば何かはじける秋の声    々
       ○秋の声あつめて走る電車かな   々

 シグナルとシグナレス
 「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、
  さそりの赤目が 見えたころ、 
  四時からけさも やってきた。
  遠野の盆地は まっくらで、
  つめたい水の 声ばかり。
 カタンコガタンコ、シュウフッフッ、
  凍えたじゃりに 湯気をはき、
  火花を闇に まきながら、
  蛇紋岩の 崖にきて、
  やっと東が 燃えだした。
 ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、
  鳥がなきだし 水は光り、
  青あお川は ながれたが、
  丘もはざまも いちめんに、
  まぶしい霜を のせていた。
 ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、
  やっぱりかけると あったかだ。
  ぼくはほうほう 汗がでる。
  もう七八里 はせたいな、
  きょうも、一日 霜ぐもり。
 ガタンガタン、ギー、シュウシュウ」 宮沢賢治